めげない、しょげない、

あなたの暇つぶしの最終手段になりたい

色のはなし

 

俺はいま何色の日々を過ごしているんだろう。

休学する前の大学生活は限りなく曇った鈍色だった。それからは少しずつ色を取り戻していった。冬は考えられないほど鮮やかだったと思う。「バラ色」だろうか。

忘れてしまえば楽になるかもしれないとわかっていても忘れることが俺はいま辛いんだとあれだけ泣き続けた感情は、いざ実際に記憶が薄れてしまうと思いのほかあっけらかんとしていてなんだか今度は虚しくなってしまう。

帰り道、気付いたら聴かなくなっていた曲を聴いた。涙は枯れたと思っていたけどやっぱり涙がこぼれた。少しだけ泣いた。

そんなことをやっていたら家に着いたので、聴いていた曲の残りの尺を外で聴いてから家に入ろうと思って星を眺めることにした。見上げた星は近ごろ度の合わなくなってきた眼鏡じゃあまりきれいには映らなかった。ぼやけているのは涙のせいじゃないことはよくわかった。

そういえば同じように外でこの曲を聴いた日があったな。あの日はめちゃめちゃに泣いた。何が悲しくて泣いているのかすらもうわからないくらいに泣いた。

まだ寒い冬の夜だった。上着も着ずに外を歩いて泣きながら音楽を聴きたばこを1本吸ったらめまいがして、冷えた身体と最悪の気分で家に帰った。今考えるとすごく滑稽な姿でしかないね。

もう半袖Tシャツでも寒くない夜がやってきたらしい。たばこは吸わなかった、吸いたくもならなかった。というかたばこは本来俺の日常には必要のないものだから普段は1本も吸いたいと感じることがないのだ。ゆえに禁煙できない人がわからない。俺は禁煙とオナ禁どっちがキツい?と聞かれたら間違いなく後者を選ぶだろう。すみません話が逸れました。

ほんのくだらない戯れ言のような時間でも俺にとっては現実にやってきたでかい夢のかたまりだった。くだらないものじゃなくなってしまっていた。目が覚めたまま夢を見て冬を終えた。

だけどもうそれも必要ない。叩いてばきばきに割れた薄氷みたいだった心はもう割れることのないように解けて春が来た。そうしてやがて夏が来る。そうそう、秋には着るのが今から楽しみな服があるんだ。

楽しいことが増えた。楽しいことを素直に楽しめる仲間が増えた。しんどいときに話を聞いてくれる仲間も相変わらず居てくれる。前よりも自分の好きなものを大きな声で「好きだ」と堂々と叫ぶことができる。忙しい毎日に疲れがたまったのと季節の変わり目なのが相まって体調をちょこちょこ崩しているけれど今の自分はわりと幸せに暮らしてると思う。

そういうわけで、元気です。もう心が締め付けられるようなこともないです。冬になるときっと期間限定の香水の匂いが街の風に乗ってやってくるから、そのときは般若のような顔面になっているかもしれませんが。

 

俺はいま何色の日々を過ごしているんだろう。

それはそれでバラ色なんじゃないだろうか。